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物核「·」零 - 第五話 砂糖

8月15日
読了時間: 3分

野良優(のらゆう)が改造した金属探知器によって、猫缶で満載のコンテナが発見された。女の国はそれにより一気に安定した肉の補給源を手に入れ、ある意味で「貓男」というあだ名は、自分の力で幸運を掴み生き延びた者を指す象徴として、集団の中に広まりつつあった。

この数日、人々は先を争うように猫缶を運び続けた。夕暮れになると、女の国のあちこちから香ばしい肉の匂いが漂う。

第一位自願離開男町の男性——田之上辰男(たのうえたつお)の手腕は確かなものだった。彼の独自の調理法によって、猫缶特有の強い匂いは消え、腹を満たす十分に実用的で美味な料理へと変えられていった。

この末世において、女の国にとって何より重要なのは食物だった。食べ物は、生存において他に代わるもののない、唯一無二の価値を持っていた。

野良優もその成果を食事という形で受け取った——一杯の「田之上辰男・特製貓男丼」。もっとも、女の国には「報酬」という概念はない。庇護を受ける条件はただ一つ、全員が力を出すことだ。男町で杭を打ち続ける田さんも、猫缶を掘り出した野良優も、求められるのは命令に従い、役割を果たすこと。そうして初めて、全体が最大限生き延びる可能性を得られる。野良優が男町を離れたときの唯一の考えも、より良く生き延びることにあった。

その夜、野良優は久しぶりに深く眠った。

深夜、騒ぎが起きた。

漆黒の闇の中に灯りが入り、怒号が飛ぶ。夢の中にいた野良優は朦朧とした意識のまま、帳篷の中の異様な気配に気づいた——自分の上に誰かがいる。蓬頭垢面の女だった。小柄で痩せ細り、乱れた髪の奥から野獣のような目が輝いている。恐怖も羞恥もなく、ただ一つの目的だけを求めていた。

「あなたたち、何をしているの!!」

真白の叫び声と同時に武田隊長が踏み込み、女を引き離した。現場は即座に制止された。

武田直子は感情を交えず言い切った。

「愛さん、今日から禁閉だ」

命令は短く、即断だった。砂糖愛(さとうあい)は拘束され、連行された。どこへ連れて行かれたのか、誰も知らない。

真白はその場に立ち尽くし、動けずにいた。問題は、出来事そのものではない。相手が間違いなく、かつて日独混血の名家令嬢だった少女、砂糖愛だと認識してしまったことだ。

真白は大災変前、宴の席で彼女を数度見かけ、軽い挨拶を交わしたこともあった。その容姿は、ずいぶんと幼く見えた。それでも身長は十九歳の真白に迫るほどだった。

その砂糖愛は、漂着した CLR シリーズの船内で発見されていた。母親の遺体を食すことで、二ヶ月間生き延びたという。密閉された狭い空間での生活により、精神は著しく損なわれていた。文明の仮面の下に残っていたのは、生存だけだった。

末世においては、野蛮に近いほど生存確率は高い。砂糖愛は、そのことを身をもって証明した存在だった。かつて温文爾雅の混血令嬢だった彼女が、わずか二ヶ月の極限状況でまったく異なる何かへと変わる。自分を「文明人」と信じていた真白にとって、それは認知の根底を揺るがす現実だった。

その夜から数日、真白は野良優をからかうことをやめた。砂糖愛の姿に、自分の未来を重ねずにはいられなかったのだ。

日々は流れ、野良優は回収隊に溶け込んでいった。泥巴隊、仕分け隊、運搬隊——作業は順番に回される。霜月真白(しもつきましろ)も泥仕事に慣れ、自ら進んで流砂帯の探査に出ることが増えた。

流砂帯は三号区域の中でも稀で、海嘯後の洪水域でのみ現れる。地下に気泡層が形成され、水分が蒸発すると砂が崩れるためだ。珍しいが、誰も見逃さない。ひとたび何かを見つけられれば、それは大当たりに等しかった。

ある日、探査作業の最中、野良優のそばから声がした。

「……ごめんなさい」

砂糖愛だった。

「愛さん……その後、大丈夫だったの?」

「少なくとも、生きてる」

「そっか……」

「お願いがあるの。材料を集めたの。道具を作ってほしいの」

「え?」

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